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【取材レポート】(続)三葉産業と上中込区 いざという時に避難できる「顔の見える関係」

災害時、行政や広域からの支援が届くまでの時間をいかに埋め、地域住民の生命と生活を守るかが重要な課題となっています。佐久市田口の上中込区では、地域内にある三葉産業株式会社長野事業所と協力し、企業と地域が対等な関係で助け合う「共助のモデル」を構築しています。令和元年の台風被害から年月が経ち、区長が交代しても、地域の防災意識が揺らぐことはありません。上中込区と三葉産業は、日頃のイベントや交流を通じて顔の見える関係を構築し、いざという時に避難できる取り組みを続けています。

1. 経緯:上中込区と三葉産業の防災協定

平日の昼間、地域の役員や若い世代の多くは仕事で不在となります。こうした時間帯に大規模災害が発生した場合、地域に残された住民と近隣企業が協力して初期対応を行う必要があります。

上中込区と三葉産業株式会社長野事業所は、令和5年(2023年)10月20日に「災害時一時避難場所協定」を締結しました。

この協定により、災害時には三葉産業の施設や敷地が地域の一時避難場所として開放されます。同社の広い駐車場(約50台収容可能)は住民の車避難や車の緊急退避場所として活用でき、社内施設は避難スペースや対策本部、更衣室や授乳スペース等として機能します。

さらに、避難の迅速化を図るため、災害時には鍵を掛けずに解放する運用や、敷地内の防犯・防災自動販売機(バッテリーバックアップ付き)からボタン一つで飲料が無償提供される仕組みなど、現場の動きに即した受入態勢が整えられています。

2. クレーム対応からの転換

三葉産業と上中込区の関係は、最初から良好だったわけではありません。以前は工場からの騒音や大型トラックの往来に対する住民からの相談やご意見など、課題の解決に向けた対話からスタートしました。しかし、対立で終わらせず、「区として何に困っているか」「企業として地域に何ができるか」を双方が話し合いました。

区の行事の際には企業からテントや机などの備品を借り、企業のイベント時には区がサポートする。日頃からお互いに「貸し借り」ができる良好な関係を育んできたことが、防災協定の締結や避難訓練の連携など大きな土台となっています。また、企業単体や自治会単体では行政に届きにくい地域の交通安全対策やインフラ課題についても双方から要望をあげています。

3. 合同救命講習会や健康測定を通じた交流

協定締結後も、顔の見える関係を深めるための交流を積極的に実施しています。

区役員と三葉産業社員による「合同救命講習会」

協定締結後、「万一の事態に備えて救命技術を身につけておきたい」という住民の声を受け、上中込区の役員と三葉産業の社員らが合同で受講する救命講習会が開催されました。心臓マッサージ(胸骨圧迫)やAED(自動体外式除細動器)の使用方法、応急手当の手順をともに学び実践することで、地域住民と企業社員が連携して実効性の高いスキルを学んでいます。なお、三葉産業の社屋入口にも常時誰でも使えるAEDが設置されています。

企業見学会とヘルスメーター測定

上中込区の役員・住民が三葉産業の工場を見学するイベントでは、精密機械加工の現場視察に加え、社員による「血管年齢測定」や「体幹・筋肉量チェック」といった測定コーナーも設けられ、結果に一喜一憂しながら会話が弾みました。さらに、合同の消火・避難訓練、プルーン狩りやバスケットボール体験といったレクリエーション要素を取り入れた交流を重ねています。

4. 区長交代後も「顔が見える関係」に

上中込区では、区長が代わっても三葉産業をはじめとする企業との協定や信頼関係が途切れることなく継続しています。その背景には、文書上の協定にとどめず、区長OBや地域ボランティアが「パイプ役」として残り続ける工夫があります。「避難場所となる企業さんと顔が見える関係を作っておくことで、いざという時に本当に役立ちます」という前区長・現区長の言葉通り、人と人との繋がりが次世代の役員へ滑らかに継承されています。

5. 机上の訓練から「実践的な共助」へ

地域の高齢化が進む中、机上の避難訓練だけでは実際の災害に対応できません。上中込区では、徒歩で避難できるルートや地域の標高調査、避難行動フロー(タイムライン)の作成、要支援者の名簿管理と声かけサポーターの配置など、身体と頭を動かして確認する「実践的な訓練」を積み重ねています。

また、避難時には「近接する川沿いのバイパス道路を避け、安全な工業団地の中央通路を通って移動する」といった具体的な地域の避難ルールも共有されています。

「地域の安全は、自分たちの手と日頃の繋がりで守る」という意識が、住民と企業双方に深く定着しています。

佐久市市民活動サポートセンターより

制度や協定という「形式」を結ぶだけでなく、合同救命講習会や工場見学、イベントなどの交流を通じて平時から「顔の見える関係」を深めていくこと。これこそが、災害時に地域を守る最大の力となります。上中込区と三葉産業株式会社が実践する対等で温かい「協働の場」は、地域の共助や防災のあり方を示す素晴らしいモデルケースです。


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