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被災者中心の災害支援は行政・NPO・ボランティアの連携で~災害時の連携を考える長野フォーラム

 長野県災害時支援ネットワーク(N-NET,代表幹事:山室秀俊・長野県NPOセンター代表理事)は3月12日,「第5回災害時の連携を考える長野フォーラム」をオンラインで開催し,県内外の社会福祉協議会や特定非営利活動法人(NPO法人)などの職員ら約90人が参加しました。佐久市の野沢会館でもパブリックビューイングも開かれ,市民と行政関係者7人が視聴しました。「被災者中心の災害支援と三者連携の重要性を考える」をテーマに,災害時支援団体に所属する5人から情報提供や講義,報告がおこなわれ,質疑応答も実施されました。

佐久のパブリックビューイングでは7人が視聴しました

【情報提供】NPO法人・全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)理事の明城徹也さんが,2022年の災害対応とネットワークの取組みを伝えました。

 同年8月の大雨と台風8号で被災した,青森,岩手,秋田,山形,新潟,石川,福井の7県におけるNPOなどの活動状況を説明しました。新潟県(村上市など2市,1村)では被害が大きかった一方,受け入れ態勢が充実していたため,多くの支援団体が入り活動していたと述べました。ほかの6県では,新潟県ほど被害が大きくなく,被災地に入った支援団体は比較的少なかったそうです。ただ支援団体がもっと入った方がよかったと思われる被災地もあったとして,その点をどう改善できるか検討したいと話しました。

 また,同年の台風15号で被災した静岡県では,「静岡県災害ボランティア本部」が設置され,ボランティアの受け入れ態勢が整えられました。しかし,被災地域が広大で被害実態がつかみにくく,被災から1週間後と1か月後を比較すると,全壊,半壊などの被害状況が大きく違っているといいます。避難所が早々に閉じられ,在宅被災者の生活の不自由さがつかめなかったと述べました。そのうえで明城さんはこう指摘しました。「静岡県は地震防災の先進地域とされていますが,水害対応には,NPOなどとの関係や市町村レベルでのコーディネーションの組織などに課題がありました」

【基調講義】前長野県危機管理部火山防災幹のN-NET顧問,古越武彦さんは,N-NETが進めている被災者支援のための連携について話しました。県職員として関わった,さまざまな被災地での経験に基づいて,行政が運営する避難所の生活環境の劣悪さに象徴される災害支援混乱は,戦前の1930年代も,最近の熊本地震の時も,変わらないと指摘しました。

 このように行政の災害支援はどうしてうまくいかないのでしょうか。古越さんは,行政は災害において「予防」と「応急」が主体で,復旧・復興への意識・取組みが薄いのではないかとみています。これを補うには,NPOなど民間の力が必要だと強調しました。

 被災者を支援するのは,どういう支援を必要とする人たちがどこにいるのか―に関する情報が欠かせません。東日本大震災の教訓を踏まえ,災害対策基本法が改正され,「避難行動要支援者名簿」を作成,活用した実効性のある避難支援ができるようになったと説明しました。

 災害支援の法整備は少しずつ改善されている。ただ,古越さんは行政担当者に次のことを求めました。つまり,(1)被災者目線に立つ(2)被災者目線で制度を運用する(3)できないことは民間との協働でおこなう――ことです。さらに,「被災地で生きていく」ことを選択した住民には,生活再建などで長期にわたり多様な支援が必要となります。そうした住民に寄り添い,その人たちの未来を築いていくことができるようにしていく。そのために,N-NETは「防災は人づくり」であるという考えに基づき,被災者支援のネットワークづくりに取り組んでいくと述べました。

【事例報告】概要は次のとおりです。

(1)長野市企画政策部復興推進特別対策室長の小池啓道さんは,令和元年東日本台風災害からの復興について説明しました。市災害復興計画は被災者の生活再建や町づくりのため住民と行政の協働などに重点を置き,安全・安心の再生,生業の再生,賑わいの再生,という3つの再生を基本理念・基本方針とします。そのうえで河川改修や防災ステーション,公民館などの中心にした町づくりについて,住民集会を被災者の声を聴きました。

 生活再建支援・見守り支援などにも力を注いでいます。たとえば,罹災証明書をできるだけ早く発行するため,ドローンを活用した被災地調査,市職員と関係機関などが連携した被災者支援,保健師による被災者からの相談対応も行われました。生活基盤となる住宅については,義援金の活用や応急仮設住宅の供与期間延長(2022年10月29日で全世帯が退去完了),災害公営住宅の整備などが実施されました。

(2)長野県社会福祉協議会改革グループ主査の山﨑博之さんは,地域とともにある災害コミュニティソーシャルワークの展開について説明しました。

 東日本台風災害では長野市において災害ボランティアセンターとして,本部のほか北部と南部に開設し,さらに北部と南部の傘下に地区ごとのサテライトを配置し,被災者からの支援のニーズをつかみ,ボランティアを送り込みました。たとえば,北部では,サテライトを特別養護老人ホームの駐車場や公民館敷地内,公民館内などにも置き,地元のニーズにきめ細かく応えるようにしました。県社協は被災した年の12月,被災者の見守り・相談支援を専門におこなう「生活支援・地域ささえあいセンター」を設け,被災者に寄り添った,相談や地域づくりなど包括的な支援体制を整えました。被災者の現況を戸別訪問などで調べて支援方針を作成したうえで,戸別訪問による見守り,巡回訪問などをしました。またサロン活動などを通してコミュニティづくりの支援をおこないました。

(3)被災地で支援活動を非営利で行っている(一社)Jumpの代表理事,千葉泰彦さんは被災者から教えられたことを語りました。

 2016年8月,岩手県岩泉町を襲った台風10号で自身も被災した千葉さんは,同年10月から岩泉町役場小本支所臨時職員として,さらには2017年7月に設立した(一社)Jumpの代表理事として,現場の直接支援を行い,また行政・社協・民間を連携させる支援体制をサポートしたといいます。

 具体的にはこうでした。被災初期は,地図上に民家の世帯主,在宅避難をプロットし,訪問看護のボランティアに,昼は在宅を避難者,夜は避難所を巡回してもらうなどしてもらいます。中長期的には生活再建上の課題を解決するための支援にあたりました。ただ,小本支所だけをみても,「トイレなし」は解消まで4か月,「流しが外」は6か月,「カセットコンロでの炊事」は7か月,さらに「在宅での2階居住」には解消に1年半もかかったと指摘しました。また,被災135世帯中,独居20世帯,高齢13世帯,障害8世帯,困窮2世帯もあり,継続した訪問・見守りが必要であると述べました。

 全国の被災地で続けている千葉さんは,被災者だけでなく被災した市町村・社協にも寄り添う姿勢が重要であり,NPOなどはまず,被災した人々や市町村などに「できること」から支援を始めてほしいと訴えました。最後に千葉さんは協調しました。「被災者は「ありがとう」しか言えません。みなさんも「仮想当事者意識」を持ってください」

 この後,個人情報の取り扱いや罹災証明書の即時発行,車中避難方法などをめぐり活発な質疑応答がありました。

 佐久のパブリックビューイング会場では、オンラインフォーラム終了後に参加者同士で感想を共有する時間を持ち、参加者からは「被災者目線で考えることが大切だということが印象に残った」「復興・復旧の段階でも地域主体で取り組んでいく必要性を改めて感じた」などの感想がありました。また、「佐久で被災者中心の支援を進めるために何が必要か?」との問いかけには、「弱みを見せあえること、受援力を高めること」や「被災直後の段階から地域の人と連携する意識」などの声が寄せられました。


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