「やさしい日本語」を使って多くの外国籍の人とつながろう―。佐久市市民活動サポートセンター(さくさぽ)主催のカフェさくさぽ「ダイバーシティ in さく~多文化共生~」(協力:佐久市移住交流推進課)が10月8日、佐久市の野沢会館で開かれました。高校生から高齢者まで幅広い年齢層の市民や外国籍の人たちの計25人が参加し、ゲストなどの話に耳を傾けました。
はじめに同市移住交流推進課の海沼南さんが「佐久市の多文化共生」について説明をしました。外国籍の住民登録者数は、市の全人口の1.27%を占める1254人に上り、中国、タイ、ブラジル、ベトナム、フィリピン、韓国、インドネシアの順で多く、なかでもブラジルとフィリピン、インドネシアが増えていると現状を示しました。同市は、外国籍の人たちに向けた支援として、定住外国人相談窓口の設置や中国語、ベトナム語、インドネシア語、タイ語などの生活ガイドブックの配布、日本語教室の開催などをおこなっていると話しました。
また、海沼さんは、私たち市民が外国籍の人たちとコミュニケーションをとる有効な方法として、「やさしい日本語」の有用性を強調し、その例としてやさしい日本語ツーリズム研究会と明治大学山脇啓造ゼミナールが作成したやさしい日本語ラップ「やさしい せかい」http://yasashii-nihongo-tourism.jp/yasashiisekaiの動画を紹介しました。
ゲストスピーカーとして「国際交流フェスティバルin佐久2022」http://www.city.saku.nagano.jp/shisei/profile/shimaiyukokoryu/salon_festival/festival2022.html の実行委員長、柳澤光一さんと、同副実行委員長、仲野友江さんが、長い外国生活の経験に基づき、外国籍の人たちとの共生について話しました。
柳澤さんはまず、同フェスティバルがコロナ禍の前には、毎年9月に開かれ、2000人を超える参加者が集まりにぎわっていたこと、今年はコロナ禍でWeb開催(YouTube=上記アドレス)としていることを報告しました。
つぎに柳澤さんは、台湾とアメリカ、タイで計15年間海外勤務し、出張や旅行で31か国を訪れた経験から、外国籍の人(個人)がその国を代表しているわけではない(たとえば、一人の外国籍の人のふるまいを見て、その人の国を一般化してはいけない。アメリカ人は…、中国人は…という紋切り型の表現がされている)、それぞれの国・地域ごとに文化が違っている、と強く感じたと言いました。
アメリカの生活では、子どもの宿題で「クマの子どもはどう言うか」という質問に答えられなかったが、近所のアメリカ人に教えてもらったという身近な生活体験にふれたほか、アメリカ人の英語の話すスピードの速さや、人種の違いに敏感なことに驚いたと話しました。
仲野さんはタイとアメリカ、中国で暮らしたと言います。タイのバンコクでは、日本人と日本語のできるタイ人の中で生活していましたが、同じタイのアユタヤに移ると周りには日本人がいませんでした。ただ、飼い始めた犬を介して地元の人たちと「つながり」、アユタヤのことを知り、日本の文化も伝えることができたと述べました。一方、アメリカでは、犬と散歩していたとき、白人男性から「アメリカから出ていけ」というヘイトスピーチを受けたという苦い経験を話しました。
また、中国で、犬の耳の病因について、医師に中国語がよくわからない日本人と思われ、難しいことを子どもに伝えるように細菌を「虫」と表現されたことで、混乱し不安になったと言います。そのうえで仲野さんは、こうした「やさしさ」は日本でもあり、日本人が外国籍の人たちに「わんわん」(犬)、「にゃんにゃん」(猫)などのオノマトペ(擬態語、擬音語、擬声語)で話していますが、これではわかってもらえないと指摘しえうえで、たとえば、「日本語がペラペラですね」よりも「日本語が上手ですね」という「やさしい日本語」が伝わりやすいと指摘しました。
ゲストスピーカーや参加者らがグループにわかれ、感想や意見を述べ合いました。とくに、「やさしい日本語」の重要性と、外国籍の人たちへの配慮がさらに必要であることが取り上げられました。
海外留学を考えている高校1年生は「多文化理解が必要であることがわかりました」と、看護学を学んでいる大学生は「佐久市でも、私が知らないところで困っている外国籍の人がいることを知りました」と感想を述べました。