「空き家」が全国で問題となっているが、佐久市も他人事ではないようです。同市の建築住宅課と移住交流推進課は2022年7月8日、野沢会館で行った出前講座(佐久市市民活動サポートセンター=「さくさぽ」との協働)「空き家について学ぶ」で、そうした状況を説明していただきました。市民ら12人の参加者からも空き家問題の解決を求める声も出ていました。
同市によると、市内の空き家は3129軒あり、世帯数に対する空き家数の割合が7.6%だったといいます(平成28年度現地調査)。これらを損傷の度合い(「損傷なし」から「主要構造部の損傷あり」まで)で、A、B、C、Dとして「不良度」を判定しました。その結果、Aランク(「損傷なし」)はわずか7.6%で、そのほかは「損傷あり」の家だったとしています。損傷が激しかったり草木が繁茂・敷地外へ広がったりした空き家は、第三者に影響を与えてしまう可能性があると話されました。
空き家となってしまうきっかけは、相続に起因するものが多く、特に相続時に登記しないと、親戚内でもめ事に発展し、子孫にまで悪影響を及ぼすおそれもあると注意を促しました。
空き家をもっと利用・活用していけばいいのでは―。しかし、そう簡単ではないようです。同市が行った空き家相談会から見えてきた課題は、第1位が「空き家の室内外に大量の残置物(荷物)があり、住民の生活感が残る」、第2位が「土地・家屋の登記上、故人のままになっている(未相続)、または名義変更されているものの、相続内容についての合意が不十分」だったということです。
同市では、こうした現状を踏まえ、「佐久市無居住家屋等対策計画」に基づき、「空き家」化の予防、空き家の適切管理、空き家の活用・流通促進などの対策を実施しています。また、空き家の所有者への情報提供、相談窓口の整備なども行っているとも説明しました。さらに、市内の空き家の情報を収集・登録し、ホームページ(「佐久市空き家バンク おいでなんし佐久」)などで情報公開し、移住・定住を促進しようとしていると話しました。
佐久市市民活動サポートセンターからは、市民活動による空き家活動事例とみんなの拠点作りに参考になる本を紹介しました。
『いずみの家』(いずみ会代表:大塚和枝さん)
―長年、JA支所で高齢者の集まりの活動をしていました。地域の居場所、支え合いの場の拠点を探していたところ、この活動に理解のある地元の方が無料で空き家を提供してくれました。
『喫茶あるいは』(代表:佐々木巌さん)
―何かおもしろいことがしたいと拠点を探し、不動産屋さん情報で空き店舗を見つけ商談成立。改装は経費削減のため自分たちで行いました。この夏にオープン予定の喫茶店集う人たちと「街の中にこんな居場所があったらいいかも」を実験的につくっていく予定です。
『夢ふくらむ 空き家活用 実践読本』(川向実著)
―自分一人の夢から地域を巻き込んでみんなの拠点にしていく過程は、物語としても実践本としても興味深く読めます。最後のどんでん返し?も見事です。
講座後の質疑応答がありました。概要は次のとおりです。
Q 残置物があっても買いたいという人もいるのではないでしょうか。そうした物件が空き家バンクに登録されていないのはどうしてですか。
A 買おうとする人の要望から、空き家バンクでは残置物の片付けを前提に登録しています。今後いろいろなやり方を考えていきたいと思います。
Q 残置物問題はどのくらいありますか。
A 空き家相談会では相談の約60%を占めます。一方、相続問題は約30%でした。
Q 残置物を片付けるのにはお金がかかります。行政の支援はありますか。
A 空き家バンクに登録してもらえれば、家財道具等の処分経費と住宅の清掃経費の2分の1以内の額(限度額はそれぞれ10万円、5万円)の補助金が受けられます。しかし、利用者は少ないのが現状です。
佐久市空き家バンク https://www.city.saku.nagano.jp/sakunikurasu/kanko/oidenanshi/index.html