10月5日(土)、佐久市コスモホールで令和6年度図書館講座が催されました。講師は全国的に場づくりを手掛けておられる森田秀之さん。図書館をはじめとする、文化・学びの場や地域の人々が課題やテーマを共有しながら創造的な活動を行う場づくりを行ってこられた経験からお話をしてくださいました。
▶人が主体的になる工夫
森田さんが手がけたある文化拠点・公共施設のお話では、市民一人ひとりが単に受動的に情報を得るのではなく、自分たちで調べ、考え、判断する場所をコンセプトに作り上げられたそうです。そのお話の中で「なるほど!」と思わされたのは「何もないスペースをつくる」というアイディアです。場所を作る際には「○○するための場所」と目的を限定してしまいがちだと思うのですが、「目的が明確ではない場所」を設置することで、市民がそれぞれに好きなことをやりだし、情報を発信・共有したりする場所になっていったとのことでした。このような「遊び」の部分が残されていることが、人を主体的にするのだと思いました。
▶人が集まる工夫
上記のような場づくりができればもちろん素晴らしいですが、しかし、一方で「扱っている内容は大事なことだけれどなかなか人が集まらない」や「まずこの内容を知ってほしい」といったような活動も多々あると思われます。
森田さんが手がけた場づくりのお話の中で、自然環境に関連するイベントのお話がありました。そのイベントの目的の一つに、「子どもたちに環境問題の学びをつくる」があったそうです。もちろん森林や動物が好きな子はいいのですが、興味がない子もいます。そのような「興味がない子」に対して、森田さんはメンバーシップの仕組みをつくりました。そのメンバーシップにいることで、子どもたちは環境問題を学ぶことに加えて、仲間と出会ったり、ゲーム感覚でポイントを貯めてピンバッチなどと交換したりなど、いろいろな「楽しいこと」を経験できたようです。そして、最初はポイントやピンバッチなどが目当てだった子どもたちの多くが、最終的には自然環境に興味をもち、充実した学びをしていったとのことでした。
▶場づくり・活動づくりの心構え
ご講演の中で、森田さんは上記の二つ以外にも、図書館や文化施設をはじめ、地域振興、森林保全、農などに関する、たくさんの事例を紹介してくださいました。それらに共通しているのは、「どこかに何らかのニーズ」があり、そのニーズに向けて「人や地域、団体などが様々な仕方でつながり、楽しんでいる」ということでした。これは取材者の感想ですが、何かしらのニーズを把握し、そこに向けて楽しみながら取り組むことが「心構え」として大切なのだと思いました。
さくさぽでは、市民活動に関する講座を開催するだけではなく、関連する講座や活動を取材し、情報発信を行っております。さくさぽ主催の講座に加えて、ぜひ他団体の取材記事等を参考にしていただけると幸いです。